腎臓の検査方法

尿の検査方法
腎疾患の診断の第一歩は尿検査であり、一般に次のような検査が行われています。

蛋白尿

試験紙法(Bromphenol blue)及びスルフォサリチル酸法(鋭敏)

血尿

試験紙法ではヘモグロビン尿やミオグロビン尿でも陽性となる

尿ph

健常人ではph6程度の弱酸性

白血球

試験紙でも検出でき、尿路感染症の診断に用いられる

細菌尿

新鮮な中間尿1ml中に細菌が10以上の時で陽性

尿比重

早朝尿の濃縮尿では尿比重1.020以上が正常で腎不全では等張尿

尿沈査

腎疾患の有無

 

腎機能検査
腎機能の評価は腎疾患の病態を把握する為に最も重要な検査です。

主な腎機能検査と関連部位

1,血清クレアチニン(Cr) 
血清Cr値によりおよその腎機能を推定できます。高齢者では血清クレアチニン値が正常でも、糸球体濾過率(GFR)が高度に低下を示す場合があります。血清Cr値は主に筋肉量、肉類や蛋白の摂取量に影響されています。Cockroft&Gaultの換算式により血清CrよりCCrが計算できますが、この換算式は定常状態における式で、急性腎不全等には適応できません。しかも、薬物のモニターには使用すべきではありません。


2,クレアチニンクレアランス(CCr)
臨床で一般に用いられている腎機能検査です。健常者のCr生産量は一定で、Crは糸球体で限外濾過され、腎ではほとんど再吸収及び代謝は起こりません。したがってCCrは糸球体濾過率(GFR)に近い値を示します。
CCr正常値では正常のGFRに近い値を示しますが、腎機能の障害の患者ではCrの近位尿細管での排泄が増加して、CCr値は実際のGFR値よりも大きくなります。したがって、CCrは真のGFRの上限値を示すと考えれます。一方、尿素窒素によるクリアランスCureaは腎機能障害時には低値を示し、高度の腎障害(Pcr2.5mg/dl以上)の患者におけるGFRの評価は次の式が最も良いと考えれます。

日本人の腎機能の基準値(体表面積による補正値)は50歳以下で
血清Cr0.64−0.71mg/dL,CCr82.7−93.3mL/minです。

 

 

3,尿素窒素(BUN)
BUN値を腎機能の指標として用いるには次の問題があります。尿素は肝臓において尿蛋白合成に利用できなかったアミノ酸が肝で代謝されることにより形成されます。このときとりアミノ酸がより多く代謝された時にはBUN値が上昇します。したがって、BUN値は高蛋白摂取、組織異化亢進(外傷、消化管出血、ステロイド療法)、組織同化の減少(テトラサイクリン治療)により上昇します。一方、重傷肝障害や低蛋白摂取ではBUN値が低下します。また、尿素は糸球体で濾過された後、40〜50%は尿細管で再吸収されます。この再吸収過程は、Na−水の再吸収に二次的に起こるので、脱水状態ではNa−水の再吸収亢進が起こり、それに引き続き尿素の再吸収が促進されて、BUNの上昇が起こります。一般的にはBUN/Cr比は10です。

4,尿中β2‐ミクログロブリン(β2MG)
尿細管障害時には近位尿細管から再吸収が障害され、尿中への排泄が増加します。

5,N‐Acetyl‐β‐D‐Glucosamidase(NAG)
NAGは尿細管上皮細胞のライソゾーム酵素で尿細管障害時に尿中排泄が増加します。
近位尿細管の機能を表します。

6,血中β2M値
GFRが70%以下になると血中β2M値は増加して、GFRと相関を示します。

7,PSP試験
腎血流量、近位尿細管機能、尿路通過状態を検査します。

8,Fishberg濃縮試験
被験者のADH(抗利尿ホルモン)系を正常とみなし、水乏症状態化で内因性ADH増加に対する尿濃縮能の反応を測定する腎髄質機能検査法です。

9,腎クリアランス試験
腎臓の機能を正確に検出する方法で、各物質のクリアランスを測定し、腎血流量(RBF)、腎血漿流量(RPF)、糸球体濾過率(GFR)、濾過率(FF)を検出して腎機能を評価します。

10,レノグラム
125I-hippuranをscintillation counterによって検出する方法で、左右の腎臓別の分腎機能が把握できます。


免疫,血清学的検査
腎疾患の診断に血清補体、各種自己抗体、流血中免疫複合体や免疫グロブリン量が有用な場合があります。


画像診断
必要に応じて次の画像診断が行われます。腹部単純X線検査、経静脈性腎盂造影、超音波検査法、CT、MRI、腎血管造影、急速静注連続腎盂撮影法、ガリウムシンチ等。


腎生検
腎生検は診断上あるいは治療上で最も確実な手段です。一般知己名適応は(1)ネフローゼ症候群、(2)急速進行性糸球体腎炎症候群(3)尿蛋白が1g以上で蛋白尿、血尿を伴う患者、(4)急性腎不全、間質性腎炎、ループス腎炎の一部など。