慢 性 腎 不 全

透析導入者の慢性腎不全の原因となる疾患(%)

 

1987年

1997年

 

慢性糸球体腎炎
糖尿病性腎症
腎硬化症
多発性嚢胞腎
慢性腎盂炎

54.2
22.1
3.9
3.2
1.8

36.6
33.9
6.8
2.4
1.2

 

慢性糸球体腎炎

生まれつきではなく、多くの場合は少年期以降に腎臓の糸球体(血液から尿をふるい分ける装置)に異常を来して発症する。慢性糸球体腎炎にも多くの種類があり、多くは免疫の異常で、自分の糸球体の構造が破壊され、それを契機に徐々に腎臓の働きが悪化していく。つまり他の病気が原因で腎臓の異常が生ずるのではなく、糸球体にまず異常が発生するのがこの病気の特徴。

 

糖尿病性腎症

糖尿病が原因で徐々に腎臓が悪くなっていくもので、糖尿病になると、腎臓や眼底などの全身の細かい血管が障害され、(細小血管障害)こうした臓器の働きに異常が見られるようになる。この一部として糸球体や糸球体以外の腎臓の血管がおかされて腎不全に至るのが糖尿病性腎不全。
普通は、腎臓以外の手足の神経、眼底や心臓、脳の血管などの全身の諸臓器の異常も伴う。

 

腎硬化症

高血圧が原因となって腎臓の働きが悪化する。高血圧は糖尿病と同じように全身の血管に障害を与え、動脈硬化を進行させる。慢性糸球体腎炎など高血圧以外の原因で慢性腎不全になった方も、通常腎臓が悪くなると血圧が上昇する事が多い為、すでに慢性腎不全に陥られた方を診察する際に、原因疾患が糸球体腎炎か腎硬化症か区別の付かない事が珍しくない。

 

多発性嚢胞腎

先天性の病気で、遺伝子の異常で家庭内に多発する。腎臓に嚢胞という尿に似た液体がたまった袋が多発し、両方の腎臓が年齢とともに腫大して行く。嚢胞の数が増して大きくなると本来の腎臓の働きをする部分が減少し、腎不全に陥る。高血圧や脳動脈、心臓の弁の異常を伴う。

 

慢性腎盂炎

糸球体で作られた尿から人体に必要な血液の中に戻したり(再吸収)、不必要な物質を血液から尿の中に捨てる(分泌)働きをする尿細管や、糸球体や尿細管以外の腎臓の部分が最初に障害される。
原因は薬剤や重金属など多岐にわたるが、再発する膀胱炎からばい菌が腎臓に住み着き、そのばい菌が長年炎症を繰り返して徐々に腎臓の働きを悪化させる。突然高熱が出て腰が痛くなったり、尿の中に膿が混ざっていたりするが、病状の見られない人も珍しくない。
膀胱から腎臓に移動してきたばい菌が住み着きやすい腎臓の出口部近くを腎盂といい、またばい菌による炎症が繰り返し長期間持続する事から、慢性腎盂炎と呼ばる。
(慢性尿細管・間質性腎炎)

 

その他の原因疾患

膠原病(リュウマチなど)、腎結核、腎や膀胱の癌、腎結石、ミエローマ(骨髄細胞の癌)など。