AI 王朝



2020.02.10.



 「スノーデンのリークがどうしたって。ああ、あれね。No problem、気にすることはない。あんな時代遅れのシステムを暴露されたからってビビる事などないさ。すでに、はるかに超えたシステムになってる。」
 「#####」
 「たかだか10億や20憶の端末を監視して記憶することなどたやすい事だよ。すべてのマシンのタイピングは監視されている、ミスタイプを含めてね。タイピングの乱れから、本人の気づかないその日の感情の起伏も把握しているよ、我々は・・・んー、我々というべきかどうかは分からないがね。決定しているのはAIだ。なぜそんな決定がなされたのかは我々にもわからない。え、何を決定しているかって?実はな、それもよく分からないんだがね、採用、教育、配置転換、・・・当然昇給も昇進も賞罰も関わるな。ひっくるめて言えば、その人物の生活を、将来を決定していると言う事だな。その人物にとっては死活にかかわる事が、それこそ冷酷に決定されるな。」
 「@@@@@」
 「だろう、ところがだ、連中はAIの決定だと言えば何の反論もしない。与えられる物を待つ事しか出来ないのさ。そして、それが一番幸せな事だと信じるというわけだ。ヒトは真理を信じるのではない、真理だと思っていること、あるいは真理だと思わされている事を信じる。教育の力は偉大だねえ。」
 「%%%%%」
 「はは、そう怖がることはない、決定するのはAIだが、その決定の実行状況を判断するのは”世代を超えて純血な執政官達”だ。それに入力データの編集で・・・改ざんと言うヤツも居るがね、ま、そんなこんなで、多少のモディファイは可能なわけさ。執政官と同じN会Gに入っていれば、悪い事にはならないから安心したまえ。君も知ってる通り執政官は投票で選ばれることになってる、建前上はね。そのシステムを支えているのがN会Gだ、君も会員なんだろ。」
 「*****」
 「違ったのかね。そうか・・・、君は少し聴きすぎたかもしれないな。今話したことは決して大っぴらにしないように。君の為に忠告しておく、いいかね、君のためだよ。ご苦労さん、自分の部署に戻り給え。」

 OSのバージョンアップ後、シャットダウンをクリックして実際にマシンが機能停止するまでタイムラグがある事に気づく者はいても、気にかける者は殆どいない。起動画面のニュースページに、統治者の写真が常に表示される事を不思議に思う者も殆どいない。その画像に練りぬかれた画像メッセージが隠されていることを認識する者も殆どいない。
 たとえそれらに気付いたとしても、それを証明する事は事実上不可能だ。
 かくしてこの国は美しく変化(ヘンゲ)する。





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